残しておきたい
新潟市小針浜(海岸)の海浜植物
  石沢 進



 1997年5月13日に新潟市の小針浜(海岸)の海岸道路を走っていた時、道路沿いに青紫色の鮮やかな植物群落をみかけた。車を止めて近づいてみると、海浜植物のハマエンドウの花である(写真1・2)。近隣一帯にその群落が散生しており、丁度満開で見事な花の時期であった。ここにはハマエンドウだけではなく、ハマハタザオ・ハマヒルガオ・ハマボウフウ(写真3)・ウンラン・スナビキソウ(写真4)・ハマニガナ(写真6)・カワラヨモギ・コウボウシバ(写真7)・コウボウムギ(写真8)などの海浜植物が育成し、県内では絶滅の心配のあるシロヨモギも僅かながら生えている(写真5)。かつての新潟海岸に広く繁茂していた海浜植物の残存とみることができよう。しかし、そこには海浜植物だけで占められているわけではなく、カラスノエンドウ・ムギクサ・ヌカススキ・コメツブツメクサ・ヒゲナガスズメノチャヒキ・オランダミミナグサ・ブタナなど帰化植物も侵入してきている。
 この海浜植物群落の広がる小針浜(海岸)は、毎年夕日コンサートを開催する浜辺であり、その日には群集に踏みつけられる場所でもある。一年に一度の踏みつけでは、絶滅のおそれはないようにも思うが、海浜群落に対する配慮を願いたいものである。幸いこの群落の周辺には大きな建物もなく、また海岸に沿った砂防のネットもないので、毎年砂嵐に遭遇して本来の砂丘の環境が温存されていることによるとみられる。
 新潟市で比較的人為の影響が少なくて残された自然の所在地は、海岸沿いと佐潟であると思っているが、海岸道路の延長で海岸の自然が大きく破壊されてきている。そのような状況のなかで、小針浜(海岸)の海浜植物群落は、かつての新潟海岸の遺物になりつつある。次から次へと発掘される遺跡は、多くの人々の理解が得られて大切に保存される機会がある。新潟海岸の海浜植物群落は自然が作りだした貴重な歴史的な「自然の遺産」であり、より身近なものとして温存させておきたいものである。
 新潟市海岸は殆ど自然の状態を失いつつあるが、早急に対策を検討すれば、かつての海岸の片鱗を残すことも可能だろう。小針浜(海岸)の海浜植物群落は、その一例であり、大切に保存したいと考えている。
写真1 ハマエンドウ(群落) 写真2 ハマエンドウ(群落近接)
写真3 ハマボウフウ 写真4 スナビキソウ
写真5 シロヨモギ 写真6 ハマニガナ
写真7 コウボウシバ(群落) 写真8 コウボウムギ(群落)


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