スキー場と大雨  石沢 進



 本年(1998年)は天候が不純であり、春先の異常な気温の上昇、夏には梅雨があけないといわれたように降り続いた長雨などで植物の生長にも何かと影響を与えたようである。春先の気温の上昇は、春の花を一度に咲かせ、特に内陸の多雪地域では小雪のこともあって極めて短い早春の草花の開花期で終わったようである。夏の長雨は、その時期に咲く花の実りを悪くしたように感ずる。

 異常気象の中でも、記録的な大雨は、様々な爪あとを残した。8月の大雨により北蒲原郡笹神村では、著しい被害を受けた。9月に五頭連峰を目指して植物の観察会を行ったが、道路は寸断されており、途中で登頂を断念した。8月の大雨の影響をつぶさに観察し、その被害の大きさに驚かされた。流されてきた土石の中に1mを超すような大きな石がごろごろ散在している現場を見てきた。土石の散在する道路の上方には、スキー場として人が利用している場があり、土石の流出には、スキー場との関連が明らかである。斜面を削って造成されたスキー場に大雨が降ると土石の流出が如何に拡大するかを実感した。土石流による植物への影響も大きく、各所で地面がえぐられて植物がなくなり、裸地化している。ここ笹神村では、人命への影響はなかったが、人の生活圏の上流にスキー場を造成することの危険率の高さを強く感じてきた。新たなスキー場開発にあたっては、このような被害の実態を参考にすべき場であり、その恐ろしさを認識しておきたいものである。

 とにかく人家に近い山の斜面には、樹林を育てて、環境を保全することの大切さを新めて強く感じた。


道路に体積した土石(1998年9月13日)


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