植物と気候(2003年)及び伝承など
  石沢 進



 最近の気候の変動には、以前より大きいように思われる。地球温暖化への傾向が年を重ねる毎に大きくなるとの報道がなされている。地球規模の変化でなくて身近で起きている現象の観察・記録も重要である。特に生物(植物)の気候の変動に伴う反応をみることも興味深い。日本全土で報道されている気象庁のサクラの開花予想は、植物と気候との関係を如実に示しているものとして、注目されている。年による変動が大きく異なると気象の変化をとらえるきっかけになる。若干最近では開花時期が早まる傾向もあるようであるが、特に際立った変化のないことに、むしろ安堵感があるものの、2003年の秋には様々な植物に花が返り咲きを見せて、やや不安に感じている。県内の各地で起きている植物の異常な動きに関する情報を、この冊子を通じて紹介して頂けると有り難い。

 ここでは新聞上で報道された記事について紹介し、また、過去に記録されている伝承を最近発刊された本から引用し、参考に資して頂きたい。そしてこのようなことに関しても本冊子に紹介頂ければ幸いである。ツバキに関する伝承や気候による変化を別項で取り上げたが、ここではさらにツバキ以外でみられた事象や伝承に触れてみたい。


● 近年(2002・2003・2004年)の気候の
  大きな変化と関連する植物の反応。
  例えば、2002年11月上旬の降雪・12月の高い気温、
  2003年の冷夏・暖い秋などである。それに 伴う植物の
  反応が報道されている。手元にある新聞記事に次のようなものがある。

 ○ 白雪と紅葉の”競演”
   朝日新聞2002年11月4日

   福島県の磐梯山のふもとに広がる標高約800mの五色沼周辺、
   雪と紅葉の競演を紹介

 ○ 厳寒前に春秋同居 モミジとツバキ共演
   新潟日報2003年12月5日

   散らずに残ったモミジと、早めに咲き始めたツバキ。

 ○ 真冬に漂う甘〜い香り(柏崎)季節外れのバラ咲く
   新潟日報2004年1月19日

 ○ スズメ誘う”小さい春”新潟 雪に梅映える
   新潟日報2004年2月6日

   新潟市白山公園 早く咲き始めた梅に雪、加えてスズメの訪れを紹介

 ○ 真冬に逆戻り 通勤ノロノロ 県内 突然の弥生寒波
   新潟日報2004年3月4日

   開花しているカンツバキに雪が積もっている写真を掲載。

 ○ 県内 陽光まぶしく彼岸の入り 気温上昇
   新潟日報2004年3月17日

   気温の上昇でチューリップの芽が伸びだし、
   暖かい日であったことを記録している。


  地球規模の気候変動にも気掛かりなことが多い。

 ○ エルニーニョが最盛期 世界まるごと異常気象
   気象庁まとめ「極めてまれ」
   新潟日報2003年1月16日


● 生物と気象との関連する伝承
  生物と気候との関連については、過去にも関心を持っていた方々も
  おり、また言い伝えもある。そのような観点での資料収集は十分で
  ないが、目に止まったものを紹介する。

 ○ 宇都宮貞子(1982)植物の民俗 岩崎美術社62p

   大豆の木が大きく伸びた年は大雪になる(六日町)
   クゾフジ(クズ)の蔓とカズ(コウゾ)の木の伸びる年は大雪降る(鬼無里)
   南天のイボ(実)たんとつけば大雪(妙高村)

 ○ 酒井與喜夫(2004)カマキリは大雪を知っていた
   農文協19P

   イチョウの葉が落ちれば、根雪となる(各地)
   カキの葉の早落ちは早雪の兆し(各地)
   カボチャの蔓の早く枯れる年は早雪の兆し(各地)
   クリの葉の早く落ちる年は早雪の兆し(新潟県)
   ダイコンの茎が立つと雪が早く降る(各地)
   ヤツデが早く花を開けば、その年の雪が早い(新潟県)
   山の紅葉が早いと雪も早い(北陸地方各地)
   ユズの中成りは雪が多い(各地)
   返り花(返り咲きの花)の多い年は大雪(新潟県)
   キノコが早く出ると大雪(新潟県)
   ツバキのつぼみが葉のかげにできる年は、大雪(新潟県)
   ツバキの花、サザンカの花が下向きに咲く年は大雪なり(新潟県)
   ミョウガの多い年は大雪(各地)
   クリの実の渋の厚い年は大雪あり(各地)
   ゴマの茎が高く伸びる年は大雪なり(各地)
   ソバの花がよく咲くと大雪(各地)
   ソバの豊作は大雪(各地)
   ムギの発芽が早ければ、大雪の兆し(各地)
   ムギの葉幅が狭く、短い年は大雪(各地)

 ○ 川名 興・高橋八十八(1994)新潟県東頸城郡松代町の植物方言と民俗
   比婆科学 第160号:29〜40

   樺の木の葉がみんな散ると2、3日のうちに雪が降る(松代町)
   大豆が豊作だと大雪になる(松代町)
   ゆきふりぼうず(クリタケ)は雪降り時に生える(松代町)
   ししばな(マルパマンサク)が咲いたから、もう雪も降り止まっただろう(松代町)
   さらがし(カシワ)の葉が、みんな落ちると雪は降り止む(松代町)
   いつぎ(ヤマボウシ)の花が咲くと湿気る、クリの花もそうだが梅雨に咲く(松代町)
   白い花(タムシバ、ヤマポウシ)が多く咲くと雨年で困窮になる。
   赤い花(ユキツバキ、ユキグニミツバツツジなど)が多く咲くと照り年で豊作(松代町)
   このみ(ブナの実)の沢山なる年は凶作(松代町)
   笹に実がなる年は不作(1993年は笹の花が咲いて不作予想、この年の米が不作)(松代町)


  動物に関する伝承も数多くあり、近年出版された図書と新聞記事の
  一部に次のカマキリに関するものがある。

  「カマキリ 高い所に産卵すれば大雪 幹の水分弁と相関分析」 県建設技術センター
  (朝日新聞 2003年11月20日に掲載記事)

  「カマキリは大雪を知っていた 大地からの”天気信号”を聴く」
  (酒井與喜夫 2004年 農文協)

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